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はじめに
この記事は、次の事業者様を対象としています。
・これから処遇改善加算を運用する経営者、事業責任者、給与事務担当者様
処遇改善加算は、一度 計画書を提出すれば終わる制度ではありません。
給与、就業規則、職員配置、職場環境の整備、毎月の加算額や支払対象者の把握などを、年間を通じて管理する必要があります。
毎年、加算率や細かな要件、様式は変更されますが、基本となる管理方法は大きく変わりません。
最初から全てを理解する必要はありません。ただしあらかじめ当解説をざっくりとでもお目通しいただくと、弊所との会議もより効果的に進めることができます。
処遇改善加算とは
処遇改善加算は職員の賃金改善にだけ使える加算です。
加算を事業所の利益として残すことはできません。
受け取った加算額は全額、従業員の賃金改善を行う必要があります。
当事務所が初年度から算定を勧める理由は、職員の給与や手当の原資を確保できるためです。
開設初月から算定したほうが、当初から働く従業員の給与についても、処遇改善加算により補填できます。
いくら入ってくるのか?
おおまかな加算額は、次のように計算できます。
月の障害福祉サービス報酬
×
サービス種別・処遇改善加算区分ごとの加算率
例えば、次のような場合です。
毎月の実報酬額 100万円
加算率 10%
処遇改善加算の概算額 10万円
※入金時期は、通常どおり請求の2ヶ月後となります。
また、同じ処遇改善加算Ⅰであっても、生活介護、就労継続支援B型、放課後等デイサービスなど、サービス種別によって加算率は異なります。
加算率は「処遇改善計画書」の様式から確認できます。
【重要コラム】加算全額を賃金改善に使う必要はありません
法定福利費増額分のうち、法人負担部分の一部控除 という論点です。
端的にいえば、処遇改善加算を全額職員に渡す必要はありません。
賃金改善によって生じる会社が負担する社会保険料等に充てることができます。
(社保、年金、所得税等の負担割合, みなし概算値)
加算額×15%までなら、処遇改善加算を使うことができます。
例:加算額100万円
100万円×15% = 15万円
実際に職員に支払う加算原資 → 100万ー15万 = 85万円
誰に支給する加算なのか
正社員でもパート、アルバイト職員で受け取ることができますが、一般的には以下のような整理となります。
支給できる職員
・管理者
・サービス管理責任者、児童発達支援管理責任者、サービス提供責任者、相談支援専門員
・支援員
・「算定事業所の業務に従事する」法人本部職員(経理、人事、総務、事務員等)
・出向職員、派遣職員
・運転手、調理員、事業所事務員 等
支給できない職員
・経営者
・役員(使用人兼役員の届出、雇用契約締結時は余地あり)
・「法人本部の業務に従事していない」経理、人事、総務等
・業務委託契約者
当事務所が推奨する支給方法
開設初年度の例(忙しい事業者様向け)
雇用契約書をとおして以下をご確認ください。※以下の数値や手当名等は例示です。
・管理者兼サビ管 基本給改善5万円 × 12ヶ月(開設月~年度末3月まで) = 36万円
・職業指導員 技能手当2万円 × 12ヶ月等 = 24万円
・生活支援員 資格手当2万円 × 12ヶ月等 = 24万円
計:賃金改善実績 計84万円
処遇改善加算(受給例) 計50万円/1年間の総額
→ 処遇改善加算50万円の受け取りに対して、84万円の払いだしができているため、支給条件をクリアできている。
※基本給は一般的には下限値を18万円として、そこからの振れ幅分をそのまま「基本給の改善」として計上します。
※これら手当や金額の根拠として「キャリアパス表(後述)」に賃金額のモデルケース(一般例、標準額等)を定めておく必要があります
加算0円のまま、払い出すことができるのか?
処遇改善加算は、実際の毎月実際の報酬総額(売上)に応じて変動するため、
・開設初期段階から職員の賃金改善だけでも先行して行い、まずは利用者数を増やしていく
・連動して受け取ることのできる処遇改善加算額も増えていく
・1年のトータルで、受け取った加算額よりも、上記手当等総額が大きければ支給要件クリア
・万が一加算が余っていれば、翌年5~7月に、追加で支払う
ことで運営できます。
その他 いったん制度だけ理解いただきたいポイント
今の時点で理解する必要はありませんが、作成をとおして少しずつご理解いただきたいポイントをまとめました。
・加算で受け取った額よりも、1円でも多く会社負担での払い出しを行う必要がある(支給要件、といいます)
・支給要件をクリアするだけでなく、前年度の賃金水準を上回る必要がある
・処遇改善加算を引いたときに、去年よりも従業員全体の賃金水準が低下していてはならない
・これまで賞与、手当を会社負担で払っていた分を、処遇改善加算に置き換える賄うことは原則非推奨
・職員の入退職により、賃金総額が増減することは問題ない
基本解説(必要に応じて確認願います)
処遇改善加算は、毎月の報酬額(実際の業績)によって入金額が変動します。
そのため、最初から強気な見込額に基づき手当等で支給すると、利用者数の減少によって、人件費負担が大きくなってしまう場合があります。
(もちろん、従業員の手当額等を業績に応じて減少させる余地はあります)
当事務所では、管理しやすい方法として、次の運用を推奨しています。
・年間の加算見込額を控えめに見積もる
・見込額の50%以上を、基本給または毎月の処遇改善手当として支給する
・残額は賞与、一時金、追加手当などの原資として管理する
・年度末に加算収入と賃金改善額を照合する
・不足分があれば、翌年4~7月末に追加手当、臨時手当 として追加で支払う
最終的には、年間の賃金改善額が加算収入額以上になるように調整してください。
なお、年度や加算区分によって、一定額以上を基本給または毎月支払われる手当で改善する要件があります。賞与だけで全額を支給する運用は避けたほうが安全です。
担当者になったら 最初に確認すること
士業に外注する場合でも、必ず自社で運用担当者を配置する必要があります。
自社 処遇改善加算・担当者の設定
・事業責任者
・経理担当者
・給与計算担当者
・国保連請求 担当者
・職員の給与額を決定または把握できる立場の方
現場の管理者だけに任せるのではなく、給与と経理の情報を確認できる方を担当者にしてください。
必要スキル
- 処遇改善加算 要件の把握
- 福祉専門職員配置等加算 要件の把握(就労、生活介護、グループホーム、児発放デイ等)
- 特定事業所加算 要件の把握(居宅介護・重度訪問介護等ヘルパー事業所)
- 自社で使用する請求システムの最低限の操作(加算区分のチェック・登録)
担当者になったら はじめに確認するべき事項
処遇改善加算の管理を始める前に、次の事項を確認してください。
確認に必要な書類等
・処遇改善計画書 → 加算区分の確認
・体制等状況一覧表 → 福祉専門職員配置等加算 または 特定事業所加算(※) 算定項目の有無
・請求ソフト → 加算区分の確認、登録
※福祉専門職員配置等加算などの算定状況は、処遇改善加算Ⅰを算定できるかどうかの判断に関係することがあります。
確認項目
□ 現在算定している処遇改善加算の区分
□ 福祉専門職員配置等加算などの算定要件 遵守状況
□ 1か月の事業所報酬見込額
□ 1か月の処遇改善加算見込額
□ 過去に提出した処遇改善計画書
□ 過去に提出した実績報告書
□ 現在使用している就業規則、賃金規程、キャリアパス表
実務担当者は誰がよいか
処遇改善加算の担当者は、次のような方を推奨します。
・事業責任者
・経理担当者
・給与計算担当者
・職員の給与額を決定または把握できる立場の方
現場の管理者だけに任せるのではなく、給与と経理の情報を確認できる方を担当者にしてください。
整備する書類
処遇改善加算を算定する場合は、計画書以外にも複数の書類を整備する必要があります。
【重要】関連様式を取得する
以下の書類のサンプルは以下から取得いただけます。
pass:7007
作成年月日は、処遇改善加算の算定開始年月日に統一するようお願いします。
例:2026年4月1日から算定 → 以下の書類も、2026年4月1日以前の日付で作成することを推奨
主要書類の解説
以下の書類は事業所内部で作成、保管するようお願いします。
※運営指導時の確認対象書類です。
処遇改善計画書
処遇改善計画書は、事務室等、従業員が見える場所に掲示する または 就業規則等同様、従業員なら誰でも閲覧できる場所に保管しておく必要があります。
就業規則・賃金規程(重要)
最低限のひな形で構いません。従業者10名未満の事業所でも整備を推奨します。
キャリアパス表(重要)
どの役職なら、いくらの給与、手当になるのかをまとめた書類です。
(あくまでモデルケース、参考値で構いません)
就業規則や賃金規程を補足する、障害福祉の独自書類です。
就業規則と合わせて保管してください。
職場環境等要件に関する書類(重要)
職場環境の改善について、どの項目に取り組んでいるかを整理します。
就業規則と合わせて保管してください。
処遇改善計画書 > 職場環境等要件 にチェックが入っているものと同じ項目の書類を整備したり、取り組みを年1回以上実施してください。
WAMネットの公表(重要)
処遇改善加算「職場環境等要件」でチェックの入っている箇所は「WAMネット」事業所情報ページに同じ項目があります。
処遇改善計画書>職場環境等要件 を確認のうえ、WAMネット登録ページから同項目のチェックを忘れずにいれてください。
年間研修計画
年間の研修予定を作成します。
研修を実施した後は、次の記録も残してください。
・実施日
・研修内容
・参加者
・使用した資料
・欠席者への対応
毎月の管理表(賃金改善明細書)
次の金額を、毎月記録することが望ましいです。
任意のExcel様式等で記録しておくことを推奨します。
就業規則と合わせて保管してください。
・毎月、いくら加算が入金されたのか
・誰に、いくら支給したのか
・加算は、なんという手当名で支給したのか
毎年行うこと
2月から4月15日頃 処遇改善計画書の提出
一般的には2~4月頃に様式が公開されます。
近年では4月15日までに提出を求められる傾向にあります。
(従来は毎年2月頃)
近年は報酬改定や様式公表の時期によって、計画書の提出期限が変動しています。
厚生労働省及び指定権者のホームページやメール通知を確認してください。
計画書作成に必要な項目
・今年度の年間報酬総額(見込み、前年度実績等を参考に)
・今年度の加算見込額
・福祉専門職員配置等加算 算定有無
・(居宅介護・ヘルパー事業所のみ)特定事業所加算 算定有無
運用に必要な項目
加算収入と賃金改善額を管理表に入力することを推奨します。
その他、基準上最低限抑えるべき項目は以下のとおりです。
・電子請求受付システム(貴社請求ソフト)に処遇改善加算 加算区分を登録する
・同ソフトに、福祉専門職員配置等加算 または 特定事業所加算(ヘルパー事業所) 加算区分を登録する → 算定している場合のみ
・処遇改善加算のお知らせ の取得 → 電子請求受付システム > 算定できていれば、報酬額支払決定通知書 とあわせて自動的に取得されます
・支払対象者
・支給方法
・福祉専門職員配置等加算 遵守状況の確認
・実際の加算入金額の把握
・職場環境等要件の整備(書面・WAMネット)
・処遇改善加算 年度ごとの追加要件確認
翌年度7月31日までに
「処遇改善加算 実績報告書」を指定権者へ提出します。
原則として、最終の加算の支払いがあった月の翌々月末が提出期限です。3月分の加算が5月に支払われた場合は、通常7月31日が期限となります。
よくあるご質問
加算を使い切れなかった場合はどうなりますか
原則として、実績報告書の受付期間(5月~7月31日)までに追加で支払う必要があります。
全額を賞与で支給してもよいですか
年度や加算区分によって、基本給または毎月支払われる手当による賃金改善が必要です。
全額を賞与だけで支給する方法は推奨していません。
加算額は計画書で定めた額で入金されるのでしょうか
パーセンテージによって決まっているため、毎月の実際の報酬総額によって変動します。
支払わない人がいてもいいですか
構いませんが、貴社内部事情を加味して検討してください(必要に応じて、加算を充てない代わりに、自社人件費(予算)を充当する等)
職員が退職した場合はどうしますか
退職した職員に必ず追加支給しなければならないわけではありません。
ただし、年間の加算収入以上の賃金改善を法人全体で行う必要があります。入退職があった場合は、支給対象者と年間の支給見込額を見直してください。
当事務所の対応について
当事務所では、処遇改善計画書や実績報告書のみを代行する業務は行っておりません。
処遇改善加算は、年に一度書類を提出すれば完了するものではなく、算定区分、賃金の決定、給与計算、就業規則の整備、職員への周知、研修の実施、毎月の加算額の確認などを、事業所内で継続して管理する必要がある制度です。
そのため当事務所では、事業者様が自社の状況を把握し、継続して運用できることを前提に、加算区分の判断、支給方法の整理、必要書類の整備方法、行政への確認が必要な事項などについてご相談をお受けしています。
書類の作成だけを外部に任せるのではなく、事業者様と当事務所がそれぞれ必要な情報を持ち寄り、正確で無理のない運用を続けていくことを重視しています。
弊所は、以下のようなご相談に対応いたします。
・算定可能な加算区分の確認
・算定方法の解説
・運用方法の確認
・支給方法の整理
・加算要件の解説
・必要書類の作成方法
・書類整備の優先順位
・事業者様が作成した書類の確認
・行政から補正や確認を受けた場合の相談
処遇改善加算の運用について判断に迷う場合は、相談予約からお問い合わせください。
※制度内容、加算率、提出様式及び提出期限は年度ごとに変更されます。実際に書類を作成する際は、当該年度の厚生労働省通知及び指定権者の案内をご確認ください。